top of page

2016年9月報告

9月の前半はsettled inするための時期であった。まず、次年度以降の派遣者のために、幾つかの事務手続き事項を記すことにする。日本にいる際の手続きについて前年度派遣者の江本氏が記されていることは、改めて書かない。

アメリカでしたことはまず住居探しである。VSRCは大学院寮の申し込み開始日が8月1日と遅く、また派遣者の場合入れる部屋がなかったため、大学が管理するoff-campus housingのホームページから自ら貸家人と連絡をとり、部屋を借りることになる(多くの場合は家1軒のうちの部屋1つを借りるスタイルだと思われる)。なお、8月1日に大学院寮の申し込みをしたものの、先方からの返事は1週間なく、こちらが返事を催促してようやく返ってくるような対応なので、丁寧な対応を予期すべきではなく、返事がない場合は積極的にメールを書くべきだと思われる。

 現在の住居の住人(数学者夫妻である)とメールのやり取りを数往復して入居が決定し、ニューヨークのペンシルヴァニア駅 (Penn stationと呼ばれる)からNJ transitでプリンストン駅まで向かう(トレントン行きのコリドーに乗車し、途中、プリンストン・ジャンクション駅で乗り換える)。1時間半の道のりである。切符は車内で車掌が確認しにくる。時刻表は、NJ transitのホームページから検索可能である。直接JFK空港ないしニューアーク空港からプリンストンに向かう場合、電車・バス・タクシーの3通りの方法があるだろう。JFKからの場合、いったん何らかの方法でニューヨークのダウンタウンを目指し、そこから電車ないしバスを使うことになる。バスはメガバスとCoach USAが通っているらしいが、筆者は使っていないので詳細は分からない。ニューアークからは、上記の電車(この場合、空港からモノレールでニューアーク空港駅まで出て、トレントン行きの電車に乗り、上と同様プリンストン・ジャンクションで乗り換えることになる)を用いるか、タクシーで向かうこともできるだろう。5月のサマースクールではニューアーク空港からタクシーを用いた。

 筆者の住んでいる家はMt Lucas Roadという大学から徒歩で数十分のところにある。プリンストン駅からバスを用いたが、バスの時刻表もNJ transitのホームページに乗っているので参照されたい。バスは1回の乗車につき1ドル60セント(トランスファーが要る場合は2ドル30セント)で、車内の両替は不可能、かつお釣りは一切発生しないので、10ドル札しか持っていない場合、10ドル支払う羽目になる。もっともプリンストン駅にはWAWAというコンビニのようなものがあるので、時間があればそこで小銭を作れるだろう(しかし事前に1ドル札とクオーター2つ、ダイム1つを用意しておいた方がよい)。バスを降りる際には壁にある黄色いテープを押すと合図になる。

 住居が定まると、家具と食事が次に必要なものである。前者については、多くの住居はfurnished(家具付き)の部屋なので心配しなくてよいだろう(何か足りないものがあれば大家か同居している住人に聞けばよい)。off-campus housingのホームページにはfurnishedか否か、洗濯機が自宅にあるか否かなどの情報が細かに掲載されているので、予め確認すべきだろう。筆者の場合、家具で必要なものは一切なかった(ただ、通学用に自転車を購入した)。万が一unfurnishedの場合には、NJ transit 605のバスで大学付近から30分ほど南西方向に行くと、3つばかりショッピングモールがあり、それらで調達することになる。筆者の友人で大学院寮に入った者はunfurnishedだったので、モールで多々購入していた。

 食事については、大学周辺に幾つか外食できるところがある。またPrinceton Shopping Centerに惣菜を購入できるスーパーがあるほか、ナッソー通りという街のメインストリートにCVSという有名なドラッグストアとセブンイレブンがあるので、そこで買い物ができる。University St.にはuniversity-storeがあり、弁当のようなすぐ食べられるものが多く売られている(焼うどんや寿司もある)。もちろん、大学構内にカフェテリアが多々あるので、大学が始まってからはそれらで食事をすることが出来る。

 着いてすぐは、色んなことが日本のやり方と違うのでストレスを多く感じるだろう。嘗てカナダに住んでいた経験があるので筆者はだいぶ楽だったが、はじめて北米に滞在する場合、日常生活の様々なこと(例:シャワーでお湯を出す方法)が分からなくて、小学生に戻ったかのような錯覚に陥る。しかし時間とともに慣れる。

 続いて、大学の手続きについて記す。日本とアメリカの双方で想像以上に厄介なのは、予防接種である。8月2日までに必要な予防接種の記録を全て(多々あるうえ、1回目と2回目の接種の間に1か月必要なものもあるので、できれば4月頃からプランニングしたほうがよい)アップロードするが、その後、Health Servicesからは8月末まで一切連絡が来ないので、myUHSのimmunizationの欄を確認し、compliantになっているかどうか自分で確認したほうがよい。not compliantである場合には、TigerhubというこちらのUT-mateのようなページにいきなりアクセスできなくなり、学生生活が事実上送れなくなるので、メールでなぜcompliantでないのか問い質したほうがよい。(筆者は8月後半と9月半ばの2回、compliantではないという連絡がきた。1回目はツベルクリン反応とレントゲンに関してで、問い合わせた結果やっぱりcompliantだったという返事が来た。これについての詳細は不明だが、大学院に入学した知人は日本でレントゲンの画像を送りつけたりしていたので、そのような作業が本当は必要だったのかもしれない。2回目は髄膜炎菌のワクチンの種類が予防接種記録に記されていないというものであった。髄膜炎菌ワクチンは寮に住む場合は必須のものであるが、筆者は幸いにも寮に入れなかったので必須でなく、従ってその旨を説明し、事なきを得た。)

 最も基本的な手続きは、事前に印刷しておいたチェックリストにサインをしてもらうべく、大学内の数か所を訪れることである。まず、Davis International Center。ここではパスポート、I-20、I-94(これはアメリカに入国した後どこかでオンライン上で記入、印刷する必要があるが、友人によればDavisセンターでも印刷してもらえるらしい)を提示してチェックインする。次に大学院事務に行き、同様の作業を行う。そしてIDカードをもらい、最後に自分が属する学部の大学院事務に行って挨拶する。歴史学部では個席のようなものはもらえないので、ラウンジかファイアーストーン図書館が主な勉強場所になりそうである。あとは、Davis ICで渡される資料に従って、オンライン上でオリエンテーションを受ける。

次にセミナーの登録について述べる。VSRCは正規の学生に認められるTigerhub上の履修登録が認められないため、教員に直接履修許可願のメールを送る。教員に参加を認められた場合には大学院事務にお願いして、Blackboardと呼ばれるページへのアクセス許可をもらう。課題文献の入手等はオンライ上で行われるためこれが不可欠である。これらによって、セミナー聴講の準備が整う。

事務手続きについての説明は以上である。

 事務手続きがすべて整ったのち、こちらの指導教員であるサー・デイヴィッド・キャナダイン教授と面談し、帰国までに1本論文を書くという目標設定とそこまでの筋道について確認をした。またジェレミー・エーデルマン教授とも面談し、セミナーにおける振る舞いや時間の使い方について有益なアドバイスを頂いた。オリエンテーションやエーデルマン教授のセミナーでは昨年のサマースクール参加者の程永超氏、ファビアン・フラウトヴァルト氏と会い、今年のサマースクール参加者ベンジャミン・サックス氏とも再会を果たした。院生間で何か今後アイデアを出していけたらと考えている。

大学院のセミナーは9月14日からはじまった。派遣者は上記のエーデルマン教授と、政治学部のフィリップ・ペティット教授のセミナーを受講することにした。前者は19世紀半ばから生じてきた資本主義の歴史をグローバル・ヒストリーの視角から捉えるものである。後者の 主テーマは政治哲学であるが、課題文献にはボダンやホッブズ、またジュリアン・フランクリンの混合政体に関する研究書も含まれているため政治思想史家にとっても重要である。共和主義についての研究書も上梓し、政治哲学と政治思想史との架橋を試みるペティット氏の知的態度から得られるものも多い。これらのセミナーの内容は次月にも記すことになるであろう。

 またプリンストンは、アカデミックなセミナーが数多く開かれるため、積極的に参加すると様々な閃きが得られる。(但し、知的好奇心に任せて余りに出すぎると自らの研究時間が削られるため注意が必要である。エーデルマン教授にはProtect your time.と言われた。)例えば、派遣者は人文学のアニューアル・ミーティングに参加した。エディ・グラウド氏の基調報告はジェイムズ・クロッペンバーグの新著『デモクラシーに向かって』から話が起こされ、黒人の置かれている苦境と、デモクラシーにおける包摂の重要性が解かれた。報告者のひとりには上述のペティット教授がおり、またジョージ・ケイティヴ、コーネル・ウェストといった名誉教授の姿もみえ、立ち見の参加者が大勢いる盛況ぶりであった。


Recent Posts
bottom of page