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2018年1月報告

2018年1月報告

 2017年12月20日から2018年3月30日の間、GHC Scholarshipにより、ベルリン自由大学フリードリッヒ・マイネッケ研究所グローバル・ヒストリー・センター(以下、GHCと略記)に、客員研究員として滞在する機会を得た。私は東京大学大学院総合文化研究科科学史・科学哲学研究室に所属しており、現在、日本におけるアメリカ医療宣教師の活動の歴史についての博士論文を執筆している。今回から3回にわたる報告では、GHCでの研究の様子や自分の専門、あるいはベルリンでの生活などについて紹介していきたい。今回の報告は、ベルリンに来て最初の月であったということもあり、ベルリンでの新生活のセットアップに関することをメインに記したい。

 なお、本プログラムによって、これまでに寺田悠紀氏(2014年度派遣)と松尾俊輔氏(2017年度派遣)がベルリン自由大学に留学をしており、それぞれこちらでの生活についての有益な情報を記されているので、そちらもあわせて参考にされたい。

 今回、私が所属することになったGHCは、ドイツ、そしてヨーロッパにおけるグローバル・ヒストリー研究の一大拠点であると言えるだろう。GHCには、ベルリン自由大学フリードリッヒ・マイネッケ研究所のファカルティに加え、フンボルト大学ベルリンと共同で運営されている、”MA Global History”と呼ばれる修士課程のプログラムと、昨年より新設された”Global Intellectual History”という博士課程のプログラムに所属する大学院生、そしてそのフェロー・ポスドクなどが含まれており、かなり大規模な組織である。それに加え、世界各地からの訪問研究員が来ており、私の滞在期間中には、10人以上が訪問研究員として在籍し、その出身地もアメリカ、イギリス、エジプト、中国、そして日本と様々であった)。

 今回の研究滞在の受け入れ教員となっていただいたのは、フリードリッヒ・マイネッケ研究所のSebastian Conrad教授である。Conrad教授は、What is Global History (2015)などの著書で知られ、ドイツ、そして世界におけるグローバル・ヒストリー研究を牽引する研究者である。彼のアプローチの特徴は、自身が日本史研究者でもあったこともあり、グローバル・ヒストリーにおけるヨーロッパ中心主義的歴史叙述を、非西洋の視点から相対化しようとするものである。申請者の研究関心は、日本ひいては東アジアの医学史を、グローバル・ヒストリーの観点から議論することにあるため、GHCの研究環境はその点からも理想的であった。なお、申請者がConrad先生と面識を得たのは、2016年5月にプリンストン大学で開催されたGHC Summer Schoolであった。その後、今回のプログラムでの受け入れ教員となることを打診し、快諾をいただいていた。

 ドイツに到着してからは、まず、様々な事務手続きを進めなければならなかった。この点については、松尾氏の報告においても詳しく述べられているので、そちらも参照していただきたい。以下では、上記の記事と重なる部分もあるが、別の事例を提供するという意味も込めて、自身の経験について記したい。

 まず、居住先について。私はベルリン自由大学が提携する、民間のアパートに居住した。これはTwenty First Apartmentと呼ばれ、私の所属するフリードリッヒ・マイネッケ研究所まで徒歩20分ほどの距離に位置していた。ただし、そのアパートにはベルリン自由大学以外の方も多く住んでいる。部屋には、必要最低限の家具(ベッド、机、イス、ソファ、ダイニングテーブル、食器、調理器具など)が備え付けられているため、短期間の滞在で新たに家具を購入する必要がなかったので助かった。家賃は光熱費・インターネット料金込みで615ユーロであり、相場よりはやや高いと聞いたが、手続きも非常に楽であったため、個人的にはとても満足している。ただし、Twenty First Apartmentは、2018年2月をもってベルリン自由大学との提携を解消することになった。もちろん建物自体は残り、3月以降はやや家賃が上がるという話は聞いたが、悪くない物件であると思うので、今後ベルリンに留学をおこなう方は候補に入れていただきたい。なお、ベルリン自由大学のHPにも、留学生や訪問研究員たちに向けた、アパートの情報が掲載されているのでそちらも参照いただきたい。

 次に、住民登録(Anmeldung)について。私の場合、大学の提携するアパートに居住したため、自分の住む場所が住民登録ができる物件かについて頭を悩ます必要はなかった。アパートの契約書とパスポート、そして住民登録のための書類(事前に住民局HPでダウンロードし、記入)を、区役所にもっていくだけで登録ができる。私はその手続きをBürgeramt Hohenzollerndammでおこなった。まず、同役所のHPで事前に予約し、指定された時間の少し前に住民局に赴き、直接、待合室に向かい、予約の際に発行された自分の予約番号が電光掲示板に表示されるまで待った。そして、電光掲示板に記される自分の部屋番号へと行き、所定の書類を提出すると、担当者とはほぼ会話もなく、手続きを完了することができた。

 最後に、ビザ(居住許可)について。松尾氏の報告にもあるように、おそらく最も手間がかかるのがビザの取得であろう。ベルリンの移民局のHPには予約ページが存在するが、いつみても予約可能日が存在しない。そのため、予約をせずに手続きをしてもらうべく、移民局が開く前から待つという方法をとる方が多いようだ。私がHPで予約をしようとしたときも、当然ながら予約可能日が存在しなかった。そのため、早朝より並ぶことを覚悟したが、ダメ元で移民局にメールで問い合わせをすると、運良く予約を取ることができた。参考までにそれを記すと、まずHPの問い合わせフォームにて、インターネットでは予約が取れないため、このメールで予約が取りたいと記し、問い合わせをした。最初の返信では、ビザの種類の確認が返ってきたため、次のメールでその正式名(今回のプログラムでは、”Aufenthaltserlaubnis zum Zweck der Beschäftigung als Gastwissenschaftler oder wissenschaftliches Personal / Issuance and extension of a residence permit for the purpose of employment as a visiting scholar / academic staff” (Sachgebiet B2)”がそれに該当する)を記したメールを返信すると、次のメールでは予約時間と予約番号が記されたメールが返ってきた。メールもそれぞれ1日で返信があった。このように、自分の都合の良い時間とビザの種類を明記して、問い合わせをすれば、運が良ければアポイントを取ることができる(もちろん、同様の試みをおこなった方のサイトでは、メールさえ返ってこなかったと書かれてあることが多いので、私の場合はラッキーだったように思う)。

 さて、予約が取れたら、指定された時間にLABO(Keplerstr. 2)に赴き、手続きを進める。LABOのオフィスが入っている建物の0・1階部分(日本で言う1・2階)にはHenry Schein Dentalという歯医者が入っており、LABOのオフィスはその2階(日本で言う3階)にある。建物の入り口(入り口は建物の裏手にあるので注意されたい)にいる守衛の方に予約したメールを見せ、2階の待合室で待機する。待合室には、住民登録のときと同様に、待合室と電光掲示板があるので、予約番号がそこに表示されるのを待つ。番号が表示されたら、担当者に必要書類を提出し、待合室で再び待機し、予約番号が表示されると、ビザのついたパスポートを受け取る。その後、2階にある機械でビザ申請料金(60ユーロ弱)を支払い、手続きは完了である。提出にあたって、担当者から質問なども特になく、また手続き自体も全部で30分ほどで終えることができた。

 なお、上記ビザの場合、必要書類中に保険に入っていることを示す書類が必要であった。私は、インターネット上でみつけたCare Conceptというものを利用したが、上記の手続きに際し何も問題がなかった。

 研究環境について。私は、主に自宅で博士論文を執筆しているので、オフィスを利用する必要性を感じなかったが、フリードリッヒ・マイネッケ研究所では、オフィスに空きがあれば、訪問研究員でも利用することが出来たようである。あいにく、私の滞在時は訪問研究員が多く、余りが無かった。オフィスはシェアとなるはずなので、他の研究者と交流するためには、オフィスを得る事も悪くないように思う。

 図書館の利用は、学内・学外にかかわらず、登録などせずに誰でも利用することができる。しかし、もし本を借りたい場合は、別途、パスポートなどの身分証明書を提示し、図書館カードを作る必要がある。私も図書館カードを作ろうとしたが、GHCでは図書館カードを共有していると言われたので、結局作らないことにした。大学では、eduroamのネットワークが利用されているので、東大のアカウントをそのまま使うことが出来るし、ベルリン自由大学においても、ZEDATというコンピュータ関係の部署に行けば、アカウントを得る事もできる(所属部署が発行する書類の提出が必要であるが)。

 ベルリンの生活環境について。ベルリンは国際都市であり、様々なレストラン、ファストフード、スーパーマーケットが揃っているため、食事については全く心配ないだろう。至るところにあるベーカリーでは、イートインをするスペースが設けられていることが多く、またインターネットを利用することができるものも少なくないので、そこで作業をすることも出来る。公共交通機関も非常に便利であり、とくに定期券の利用がお得である。大半のことであれば、A・Bエリアの定期券を買うので事足りるだろう。また、10時以降限定の定期券(Monatskaret, 10-Uhr-Karte)であれば、59.10ユーロ(一ヶ月)で買うことができる。ベルリンの治安は比較的安全であると言えるが、人が集まるところではやはり注意が必要であろう(地域別の治安についてはsafearoundも参照)。

 ベルリン自由大学内は当然ながら、ベルリン市内では多くの人が英語をしゃべることができるので、ドイツ語がわからない者でも生活を進める上では問題ない。しかし、当然ながら、ドイツ語を学ぶことでドイツでの生活・研究がより豊かになることは間違いない。ベルリン自由大学にはドイツ語を学ぶ様々なプログラムがある。寺田悠紀氏のブログでも記されていたように、留学生のための無料のドイツ語コースを提供している。これは基本的に正規の学生のみが対象のようだが、訪問研究員でも空きがあれば受講可能なようだ。それ以外にも、ベルリンには多くの語学学校がある。有名どころでは、日本でもおなじみのゲーテ・インスティテュートもあるし、少し探せば、それよりも半額以下でドイツ語を学べる学校が容易にみつかるだろう。

 以上で今回の報告を終えたい。次回は、授業やコロキアムの様子を紹介したい。


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